たったケーキひとつ分、

作者深町 色

15歳の夏、僕は恋をした。これは、僕と君の初恋を思い出にする物語。






ぱちり、と目を覚ました君を僕は見つめる。


誰にも譲れない特等席から。


まだ少し眠気が残る君は、頭をゆらゆら。







寝起きの無防備な顔も、色素の薄い髪も、一瞬揺らめく瞳も。



今すぐに抱き締めたくなるくらい、君がすきだ。




だから。




だから、どうか。




どうか、神様。




彼らが、永久に共にありますように。






君はいつも、僕にチーズケーキを買ってくる。


僕はそれが、本当は苦手で。


だけど何故だか、今はどうしようもなく。


チーズケーキの癖のある甘さが、恋しいと思う。


それを思い出しながら、僕は、強く瞼を閉じた。






さぁ、別れの準備をしよう。