ごおっと雨が降る8月。異常気象でこの時期に梅雨が来るとか世界は、狂っている。公共の場で大きな声で話すJK、頭が狂っている。そして駅のホームで電車を待ちながら下を向いて携帯をいじる僕、自身が狂っている。電車はうなりを上げて雨を弾き飛ばし僕の待っているホームへ流れ込んできた。ゴミのように人を回収するか締め出されるかが速いか否や、どんどん奥に流されていく。僕はこの流れも現代が生み出した狂いなのだと感じる。
自分の最寄り駅でおり、いつもの場所にそそくさと向かう。この道なりはもう何年間も通っている通学路であり人などが通らなければ目をつむっても歩けるだろう。見るものがなくなった携帯をしまい、そこに立っていた女性に声をかける。これが僕の日課だ。
「こんにちは」
「あら、真紀ちゃん、いらっしゃい。」
この女性は僕の大好きなお姉さんなのだ。
「今日も寄ってらっしゃいよ。ハーブティとショートケーキよ」
「ありがたく上がらせてもらいます」
僕は女性についていった。彼女の名前は平井 菜穂さん。おしとやかでセミロングくらいの髪の毛の長さの人だ。笑った時に出るえくぼがとてもかわいらしい。ふんわりとした白スカートが似合うまさにお嬢様系女性だ。僕は、この人は、いや、この’女性’は狂っていないと思う。この女性は、ね。
「はやくあがりなさいよ」
優しい声とゆったりとした口調で言う菜穂さん。
「今行きます、菜穂さん」
僕はそう返事をし、お邪魔しますとひとこと加えた。
「さ、テキトーな場所に座れよ。今、食いモン持ってくっから今日やられたこと俺に洗いざらいすべて話せ。」
口調が荒くなった菜穂さんを横目で見つつ、上がった場所から一番近い椅子に腰を下ろした。