重たい雲と雨上がりのギター弾き

作者阿倍カステラ

ある日、かすみはバンドのボーカルに指名された。
かすみが飼ってる老犬「ハミング」を僕はその容姿から「ハム犬(けん)」と呼んでいた。
雨上がりに僕らは歌った。




青に青を塗り重ねるように彼女が歌ってる。

残念だ。空が青けりゃなお良かったのに。


さっきからぼくは橋のたもとで何食わぬ顔して彼女を待ってる。

橋の欄干を時々かるく膝で蹴りながら。あまりつよく蹴ると膝が痛いから。



灰色に灰色を塗りかさねたような重たい雲が、新学期の黒いランドセルのように、その黒さと重さを増す。


雲は今にも地上に落ちてきそうに空にぶら下がり、ランドセルは小学生の肩からずり下がる。



ますますぼくは、こんなところで彼女を待ってることがじれったくなって我慢できなくなって、終業のチャイムみたいに彼女を呼ぶ。橋の真ん中に彼女がいる。



「かすみ〜、早く帰らないと雨が降りだすぞ〜」