ある国に明るく元気なお姫様がいました。
「ふわぁ~暇だな~」
でも皆から大事に大事にされているので自室以外の部屋すら殆ど入れてもらえません。
あんまりにも毎日が退屈なので悪い魔女の頬を札束で引っ叩き、門番がドラゴンのお城に閉じ込めてもらうことにしました。
※どうやって魔女を呼び出したかはご都合主義です。
両親の王様と王妃様は、心配して国中に呼びかけました。
『もし咲(さき)姫を救い出すことができたなら誰であろうとこの国と姫の両方を与えようぞ』
国中の騎士がまたとないチャンスに、猛然と咲姫の(閉じ篭る)閉じ込められた城に向かいだしました。
方や引きこもりの咲姫は古びたお城の中を元気満々で探索をしておりました。
厨房、大広間、図書室etc・・・・・・!
古ぼけていましたがどれも姫には珍しく、鮮明に映りました。
咲姫は城を探検しながら決意しました。
(ここに住もう。)
そういえば此処に来たとき、魔女のワープで来たものだから庭を見るのを忘れていました。
外への扉は大広間にあります。
咲姫はなんだかどきどきしてしまいました。
痛いほどに心臓が早く打ちます。
大きな扉を開けると、素晴らしい外の景色が・・・・・・。
「あ、咲。ゴミは片しておいたよ」
ありませんでした。
突然現れた少年は咲姫に向かって笑って見せました。
咲姫のよく見知った、整った笑顔です。
ですが咲姫はその姿に軽く面食らったように後ずさりしてしまいました。
「な、なんで幹がいるの・・・・?」
「え、だってホラ。咲が魔女に城に閉じ込められたみたいだから助けに来たんだよ」
さ、かえろ?と真っ赤に染まった手を咲姫に向かって差し出します。
咲姫はその手を取ろうとせず、また聞きました。
「あの~~・・・・ドラゴンがいなかったでしょうか?この城の倍くらいある・・」
「ああ、アレ?倒した。」
事も無げにそういった幹に咲姫は言葉を失ってしまいました。
そういえば、幹の背後になにかドラゴンみたいなのが倒れているなと思っていましたが、それはドラゴンみたいなのではなくドラゴンだったのです。
外を見渡すと武装した男の人たちで死屍累々としてました。(どうしてなのかは咲姫には分かりませんでしたが)
最初、幹が赤い軍服を着てきたのかと思いきやそれは返り血を浴びたためと分かりました。
「じゃあかえろっかーーーー」
血にまみれた手が無理やり咲姫の手を握ります。
これで楽しいボッチライフも終わりです。
「ーー僕の花嫁さん」
?
幹の思いがけない言葉に咲姫はびっくりして立ち止まってしまいました。
「ん?どうしたの」
「いや、なんかありえない言葉が聞こえて」
「『お嫁さん』?」
「そう、それ!」
「いや可笑しくないよ。僕はドラゴンを圧倒し、見事咲を奪還した。だから結婚には誰も文句は言えない」
「いやいや。そんなの誰も認めないよっ」
「どうして」
可愛らしく小首をかしげる幹に、咲姫は叫びました。
「だって私達、双子の兄妹じゃない!!」
じゃない・・じゃない・・・ゃない・・・・ない
二人の間をエコーが埋めます。
咲姫はなんだか少し恥ずかしくなってしまいました。
ですが幹王子はクスリ、とお人形さんみたいに綺麗に微笑むと言いました。
「お父さんがね、『もし咲を取り戻せたら誰であろうと国の継承と姫を嫁にとることを許す』って国中にお触れを出したんだよ」
「えーーーー?!」
「うん、いい反応だね。飽きなくていいなあ」
こうして二人はお城に戻ると幹王子の強い主張により、4年後18歳になったら結婚することになりました。
「もうこれからは勝手にどこかへいかれないようにしなきゃね」
「だからって何処までも一緒なのは勘弁してよ・・・・・・」
こうして双子の王子様と王女さまは末永く幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。