mimiko

後味の苦い物語
この物語はミステリーの体を取っていますが、その実、ホラー。
世にも奇妙な物語で映像化されても不思議ではない理不尽ホラーです。

前編後編とありますが、前編は全体的にプロローグのようなイメージ。
隣人とのバラの会話等、丁寧ですが片っ端から書いていったような印象を受けました。登場人物を取捨選択していくと、主人公、瀬川さんの環境がもっとわかりやすくなるのではないでしょうか。

先の映像化のイメージが湧いたのは、シナリオを思わせる文体だからでしょう。
これは筆者さまの個性なので良いと思いますし、私は好きです。

淡々と綴られる文章が、この物語の根底にある不気味さを彩ってくれます。
好みを言わせていただけば、後編の謎の部分や、善良な刑事、近藤さんを前編にも持ってきていただきたかった。
彼の存在が、ますます理不尽さに拍車をかけてくれます。後編だけの登場ではもったいないと思いました。