「月」をネタにしたショートショートです。狼のルナティックに火に飛び込んだ兎、竹から生まれたかぐや姫。空想を駆り立てる月に捧げたお話です。

地中深く



土に囲まれた室内に。



「おばあーちゃーん」



「お話、聞かせてー」



甲高い、2つの声が響く。



「あらあら」



ランプに照らされた



壁の中。



揺り椅子が



ギシリと動いて。



「どんな話が聞きたいの?」



老婆の



穏やかな問いかけが



幼い双子の影を



包みこんだ。



「それは」



「もちろん」



少女たちの



にんまりした声が



「発明家のお話ー」



息までぴったりと重なる。



ふわりと笑う音は



始まりの合図。



「昨日の



出来事ような、昔…」



まだ人々が、月を恐れて



夜を知らない話。








~穴をあけた男より~