『4番、ライト、石塚くん』
女性のアナウンスが響く会場。中体連、全国大会への切符をかけた決勝戦だ。
中学の試合だというのに、会場は満席だった。
県内でトップ2を争う優勝候補の1角、盛隆学園中等部の野球部対、2年前まで地区予選1回戦敗退の常連だった、桜中学の対戦。
完全なるダークホース。準決勝で優勝候補筆頭を打ち破った新星、桜中学に期待を寄せる観客席。
3対0。桜中学リードの状態で最終回裏、ワンナウト2塁、盛隆学園の攻撃。優勝候補2番手に対する見事な完封劇。その会場全体の空気から、誰もが桜中学の勝利を疑わなかった。
しかし、2ストライクノーボールから放られた白球は、甲高い金属音を響かせる。
迷いなく振るわれた、死にかけた虎の最後の反撃。
――その打球が、全てを狂わせる。
ピッチャーは女。4番は欠陥を抱えた『元』天才。
カオスな青春野球コメディー!?