忘れられない。
ピアノの先生として現れた銀髪の紳士は、日本語もあまりできない日本人嫌いの頑固外人だとばかり思っていた。
しかし、そうではなかった。
家庭の事情で東京まで通っていたピアノのレッスンを中断していたさなか、突然、私の前に現れた。
背の高い、日本語をしゃべらない外人。
今まで見てきた外人は、日本語が上手な人ばかりだったから、みんな日本語をしゃべるのだとばかり思っていたから、余計怖かった。
彼は、作家でもあり、ピアノの作曲家でもあり、大学の講師も勤め、日本の物語を書き、まるでラフカディリオ・ハーンのごとく、日本を愛した人だった。