嘘吐きに接吻

作者由良

『…言ったでしょ、俺は嘘吐きだって』

ゆらり、らしくもなく漆黒の水面が瞬くから。


だから私は言ってやるのだ。

いつもの彼のような皮肉めいた口調で。


『言ったでしょ、それでも構わないって』


嘘吐き、そう形作った唇に、そっと押し当てるそれを。


簡単に永遠と呼ぶことが出来たなら、私たちはきっと簡単に寄り添うことができたのに。