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此方を御覧、世にも妖しき見世物が在るよ美しき花嫁、亞浬亞。その胎内には既にひとつの命を授かっている。しかし亞浬亞が最高の幸福を掴むはずの結婚式の最中、全ての惨劇は始まった。十字蛾による血の復活、そして、メシア降臨へと繋がる新月の夜が――!(『願ひ事』)昭和初期の怪奇小説を思わせる硬質の文体で描かれた、幻想ホラー作品集。難解な漢字交じりの文体、合理的な説明をほとんど排した独特の世界観、華麗でグロテスクな描写は、読者の好き/嫌いがはっきりと分かれるでしょう。江戸川乱歩や澁澤龍彦などの文章に馴れている人にオススメです。個人的には『広目屋』が気に入りました。物語の冒頭の、父親の「さも無いと、氣が狂って仕舞うよ…」という台詞が、私の、見てはいけないと言われるものほど見たくなる心理を煽ってしまい、すっかり惹きこまれました。欲を言えば、『願ひ事』はやや終盤が性急な印象を受けました。聖亞のエピソードがもう少し欲しかった気がします。恐れる事は無い、此れは唯の走馬灯だよ。蝋燭に火が点る僅かの間だけ、色鮮やかに回り続けて、さうして、呆気なく消えて仕舞ふんだ――