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一つだけ、元に戻したいものがあるから。志乃が千早に別れを告げるところから始まり、複雑な家庭環境や温かい愛情を描きながら進んでいく物語。まだ好きなのに別れを告げた理由が気になり……ページを捲る手を止める事無く、読み進めてしまいます。幸せだった過去が嘘のように、壊れてしまった家族の関係。志乃が勇気を出して両親に自分の気持ちを伝える場面では、読んでいる方も凄く緊張を感じましたし。志乃が“離婚して欲しくない”と素直に伝えた事で両親の態度が変わった時は、その緊張を越える安堵と喜びを感じました。……“子供がいう言葉は時として魔法の言葉になる”まさにその通りだな、と思います。そして。作者様は言葉の使い方がとても上手く、志乃の複雑な感情や彼女の置かれている状況がとても近くに感じられて。複雑なテーマを扱っているのにも関わらず、すっとストーリーに入り込む事が出来ます。考えさせられ、悲しくも切なくもなるけれど、最後は優しい気持ちにさせて貰えるような。素敵なお話でした。私はこのお話に出会えて良かったと心から思います。皆様も是非ご一読を*