名前の無い人。

作者柚季

切ない、物語なのです。



「久しぶり。」



そう言った彼の存在を、


わたしは知らない。




「ごめんなさいっ、覚えてないんですっ」




それを思い出したとき、


涙が抑えきれないのです――。




「知ってるよ、だから大丈夫。」



微笑みかけてくれた彼を、


一生忘れないと誓った。




「思い出したよっ、・・だから、だから戻ってきてっ!」






今更思い出したって、もう遅い。





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彼は、


「バイバイ、」


いなくなったのだから。