青年が二人、いた。
二人は、市ヶ谷柳町にある今にもぶち壊れそうな、そんな古ぼけた剣術道場に寝食した。
「なんかさあ、平助ってさ、」
「なんだよ」
「かびだな。」
「かびじゃねェよ!」
一人は宗次郎、一人は平助。
二人はいつもこんなふうに云(い)い合っていた。
宗次郎がニコニコと笑って云うのと反対に、平助は真赤になってツバを散らして云い返した。
いつも、いつも、そうやって云い合っていた。
ずっとそうしてきた。
今も、
そして、
だから、これからも、ずっとそうだと思っていた。
―――――――……
テーマ、家族