その喫茶店は、街を抜けた一角にあって、
甘い香りを漂わせていた。
男が煎れたその熱いコーヒーは、僕が今まで飲んできたなかで一番おいしかった。
僕は、あのコーヒーの味を忘れらずにいる。
僕は、あのガトーショコラの味を忘れられずにいる。
僕は、あの日の出来事を忘れられずにいる。
彼女を亡くし、生きる希望をなくしたあの日から‥―――――