うのたろう
何度も読みたくなるおもしろさ
この作品は、誇張ぬきに「おもしろい」です。
へヴィなテーマをライトな文章で読ませてくれます。
「です・ます」でしめる、おだやかな一人称。
テンポ・リズムがゆりかごよりも心地よく、読者をぐいぐい引っぱっていきます。
読みはじめたら最後。
終わりまで一気に、読まされてしまいます。
物語は、ひきこもりの少女の部屋からはじまります。
物語を経て、主人公の少女がどんなふうに成長するのか。
すべてのヒントは、すでにひっそりかくれています。
技術的にもかなりハイレヴェルな作品。
すべての映像が鮮明に見え、登場人物や街の景色が、すぐそこの手のとどく場所に存在しているような錯覚。
これが本物の小説。
本物のおもしろさ。
人により好物かそうでないかの違いはあるにしても、この作品をつまらないという人間は、まずいないと思います。
最後になりましたが。
個人的にはラストも好きです。
映像でいえば静止画からのブラックアウト。
とてつもない余韻が待っています。
うまい。
ぜひ一度、読むことをおすすめします。