笑顔のヒトヒラ

作者陽野中

私が両手を広げても空はちっとも飛べないが

飛べる小鳥は私のように

地べたを早くは走れない。

私が体をゆすっても綺麗な音は出ないけれど

あの鳴る鈴は私のように

たくさんな歌は知らないよ

鈴と小鳥とそれから私。


みんな違ってみんないい。


あたしがまだとても小さい頃にお母さんが歌ってくれた詩。

眠る前には必ずデタラメなメロディーを付けて唄ってくれた子守唄。


お母さんのただ一つの記憶。


でもあとは思い出せないの。

優しかった笑顔。声。ぬくもり。


いくら探しても見つからないの。



なんでかな?



――――――お母さん。