うのたろう
王道であり、現実のほんのちょっとうえにあり
結婚というテーマに、これ以上ないくらいにふさわしい作品だ。
40ページという短編のなかに「王道」で「べた」で「ウエディングストーリーときいたらまっ先に思い浮かび、読んでみたいなと思う」ような内容を、あますことなく凝縮させている。
主人公・愛羅は二十歳の大学生。
バイト先で出会った、みっつうえの大学生・宏一と学生結婚をした。
結婚後、宏一は大学を辞めて働き、愛羅は大学にかよい続ける。
愛羅の学費やふたりの生活費は、宏一がむりをして稼いでくれている。
好きな人と結婚すること。
しかし、今の生活は変わらないこと。
それは、この年代の女の子たちがのぞむ一種の理想の世界であり、あこがれであり、現実では叶うことのすくない夢である。
そんな夢を心地よく見せてくれるのが本作品だ。
さらに物語のラストでは、この心地いい夢に、より心地のいい感動の夢が二重三重に重なってくる。
現実のちょっとうえにある、思いやりとやさしさと愛のあるこの物語は愛羅と同年代の女性に、ぜひ読んでもらいたい。
おそらく、こんな結婚がしたいと読み終わったあとに思うだろう。