世の中には喜怒哀楽を表現できない人がいる。父はそういう人だった。ある日、家族でピクニックに行ったとき、私たちは父を置き去りにしてしまった。
世の中には、喜怒哀楽を表せない人がいる。父はそういう人だった。まるで、雑草の中にこぼれ咲く、名もない花のような人だった。ある日、ピクニックの帰り、私たちは父を“置き去り”にしてしまった。気づいたのは、妹の千夏だった。