『お前、見えるのか?』




 自分の手元さえも微かにしか見えない、そんな神無月の夜。

 わたしの目の前にいた男の人は不思議なほどまでに輝いていました。

 その姿があまりにも綺麗で、言葉もなく、ただ、見つめていました。




 「あなたは…、」




 ほんの一瞬の間の瞬きでした。


 しかし、もうそこには誰もいなかったのです。


 何度もそこを訪れましたが、その人に再び会うことはありませんでした。



 いつの間にか、10年という月日が経っていました。