ひな


蓮華は5歳のときから入院していた。
それから病室の外には出たことがない。変化のない毎日で、泣くことも諦めてただ通り過ぎる時間を見送る。
変化するのは窓から見える桜。

『桜の下には死体が埋まってる』

そんな話を思い出し、その桜に触れてみたと、肌で感じたいと願う日々。
病室にやってくるのは事務的な看護士と独り言のように言葉を羅列する担当医。

この病気は治らない。
絶望の中で生きる彼女の体に訪れた痛み。最後を感じたとき、彼女は――。


とても儚く綺麗なお話です。
すべてに絶望しているのに、『死』はやはり恐ろしく受け入れ難い。
その気持ちにはとてもリアリティさを感じます。
そして目に浮かぶような情景。
紅い桜、敷き詰められた花びら。
何もかもが幻想的です。

いつか二人でお花見を。
そう願いたくなるようなお話でした。