錬徒利広

絶望の終章
死へ。
何故人はそれを恐れるのか。
そしてなぜ人はそれを追求し、そこへ向かおうとするのか。
分からない。そんなこと、人間にとっては何も分からないのだ。
そしてそれを更に錯綜させる「死ぬこと」。

この作品では、それが端的に、しかし「小説」の領域からはみ出すことなく綺麗に描かれている。
生きる意味を失うのはいつか。
そして死を選択した人間は、残された人々は何を思うのか。
容赦なく描かれる近未来の社会。繊細な人間の情緒。
自殺が後を絶たない今だからこそ、誰もが死を恐れ、何かに依存し、そしてこんなストーリーを書かない。
だがそれを敢行した作者を、私は素晴らしい、よくやってくださった、と思う。

現代社会は残酷である。
私も一時期精神的に落胆していた時期がある。そしてただひたすら死にたいと思っていた時期がある。
しかし私はそれを乗り越えることができた。その答えが、この小説内に書かれていたことにあったような気がした。

死ぬこと。
それに現代的な視線から向き合うことができる傑作だ。