「ねぇ、お母さん。早紀もあれが欲しい。」
あれはまだ私が幼かった遠い夏の日‥‥
お祭りで、ヨーヨーをもっている女の子を指差して言った。
赤い水玉のヨーヨー。
「じゃあヨーヨー釣りしましょうね。」
「やだ!あの子の持ってるのが欲しい!!」
「早紀。あのヨーヨーはあの子の物だから貰えないのよ。」
「やだやだ!早紀もあれが欲しい!!わぁ~~ん!」
あの時は泣いてお母さんを困らせたっけ…――
他人のものって、それだけで魅力的に見える。
「隣の芝生は青い」
このことわざ、他人のものは実際よりもよく見えること。
現実は自分のものと大して変わりはないものなのにね………
人間て欲が深い生き物――
《完》