錬徒利広

毒がうまく盛ってある
わずか十ページでここまでできる。
 これは一種の才能である。
 ある視点から、世界規模で捉えた抽象的な作品かと思わせておいて、何か最後にその存在がとんでもないものではないかというのが予想される。
 しかし敢えてそれはしない。まるで幾何学の定理が無条件で覚えさせられるように、その存在の真実は不明のままである。あるいは最初からすべてをさらけ出している。
 なのにまだとっておきの遅行性の毒がある。

 是非この発想を生かして大作を書いていただきたいという思いと、次回作への期待を込めて、敢えて★4つを投じさせていただきます。
 とてもいい作品に出会えました。

 私のタイトルは、やはり自分の中でも「無題」である。