水に愛でられし少女

作者一葉

万物に宿りし精霊が意思持つ世界。人と同じ心を持ちながらも語る言葉を持たぬ彼らに翻弄されてきた、少年と少女の物語。互いに傷を抱えて出会った二人は、はたして――

「君の精霊は、一度でも君の大切なものを奪ったことがあるのか?」



少年は過去の痛みを忘れられないまま、いまを当てもなくさまよっていた。




「誰にだってある感情が、なぜ私にだけ許されないんでしょうか?」



少女は未来の痛みを怖れるあまり、いまを歩むことさえ忘れてしまっていた。






万物に精霊が宿りし世界。人同様の心を持ちながら人と語るすべを持たない彼らが息づく場所で、ともに形の違う痛みを抱える少年と少女は出会った。




…そこに生まれるのは、喜びか、狂気か、あるいは――