栗栖ひよ子
それでも奇跡を願って
タイトルに惹かれて読み始めました。
難病におかされた主人公が、死に場所を求めて病院を飛び出す――……。
物語自体は、切なく悲しいものですが、作品に漂う雰囲気に、悲壮感はありません。
田舎町でふれる、人のあたたかさ、優しさ。
それは、死を覚悟した優香に、神様がくれた、最後のプレゼントだったのかもしれません。
クマさんとノシさんと言ったような、おばちゃん、おばあちゃんが魅力的に描かれた携帯小説は珍しく、素敵だなと感じました。
優香がリョウと交わした“約束”の言葉が切なくて……。
結末は予想できながらも、それでも奇跡を願ってしまいました。
読み終えた今、心にぽっかりと穴が空いた気持ちです。
神様、救いをくださるなら、どうか。
作品の中でずっと、優香とリョウの思い出が、生き続けていますように……。