麻井深雪

魅力的な猫少年。
遊び人の幼なじみに片想いをしているけど、彼も実は自分が好きでその気持ちを紛らわす為に他の子と遊んでいた――。

ケータイ小説界では鉄板とも言える王道設定。
なので読者は最初からこの二人が想い合っていることは容易に想像がつくし、特に彼の気持ちが読めないわけでもない。

それなのにここまで読者を惹き付けることができるのが著者さまの実力だと感じました。

同じような話を何度も読んだことがあるのに、この話を読んでまた面白いと思う。
そう思わせる独自のキャラの魅力と話自体の雰囲気を創り上げています。

主人公の切ない心理描写も上手ければ、彼が焼くヤキモチが可愛くて何度も見たくなる。
他の男性と歩くたびに彼に目撃されますが読者はむしろそれを期待し、その通りになるから楽しいと感じる。

読み手の心を上手く掴んだ良作だと思います。
切なさと甘さのバランスも絶妙。

安定した文章力と構成力で頭を使わずにすんなり楽しめます。
サラッと読める文章量なので軽い気持ちで読んで楽しめる作品です。

ぜひご一読を。