栗栖ひよ子

神々しい、究極の愛
鬼と、巫女。
それは本来ならば、決して相容れない、対極の存在。

しかし、紅漣と千砂は、お互いに、孤独・哀しみを抱える存在として、とても近いものだった。

神々しさと厳粛さに包まれた、哀しい恋物語。
胸が痛いほど切なく苦しいのに、それ以上に、涙が零れるほど儚く美しい。

「私は何故、泣くのだ?」

忌み嫌われている鬼の涙は美しく、その魂は高尚で。

鬼を討とうとする人間の心は、とても濁り、穢れに満たされている。

「人間は、愚かだ」

そう、本当に恐ろしいのは、負の感情に支配された人間なのだ。


二人の契り。
千年の誓い。

この物語のラストシーンは、究極の愛の姿だ。

孤高の鬼は、最も神聖な存在なのかもしれない。