卒業式の日の夜。
わたしはある人に携帯で電話をかけようとしていた。
アドレス帳の「た行」をじっと見つめる。
「た行」に入ってるアドレスはただ1人だけ。
”田部井 神太”
わたしの幼馴染。
深呼吸し、決定ボタンを押す。
もう心は決まってる。
どんな結果でも後悔はしない。
「もしもし、なに？」
電話には、
これからわたしに何を言われるのか
当然知ってるわけもない 神太 が、いつものように気だるそうに出た。
とっさに電話を切りたくなる。
一歩踏み出そうとするだけなのに、こんなに勇気がいるものなのか。
まだ一言も喋ってないというのに手汗がひどい。
早く言ってしまおう。
電話をかける前から何回も何回も頭の中で繰り返してた言葉をついに口に出す。
「あのさ･･･」