夢見る大人じゃ、いられない。【完】

作者yqge

結婚したいアラサー女・芽衣の恋人、健吾は――売れないお笑い芸人だった。


芽衣は女子でいたかった。「女子」の使用期限、三十路が近づいても――強かで、偉くて、可愛い――女の子でいたかった。

彼女は、童話のように長年付き合っている恋人とは自然に結婚し、幸せな結末を迎えられるという根拠のない瞬間を夢見ていたが、それは彼女とその恋人には訪れなかった。

何故なら彼女の恋人・健吾は売れないお笑い芸人だったからだ。二人の前には「結婚」を考える前に「どうすれば生活をしていけるか?」という問題があった。

次第に彼女は彼の前で笑うことさえ出来なくなった。健吾はそんな彼女を前にして、同じ業界の長谷川雅希と恋に落ちてしまう。

健吾と別れた芽衣は、彼を他人に投影し、見せかけの幸せを手にするが、一緒にいて自分のことも好きになれた相手・周りの人にも優しく出来た相手というのは、互いに同じであったと再確認し、二人は再び同じ時間を過ごすことにする。