繭結理央
愛を想う
あめ玉と“ぼく”の、なんでもないような対話……いや、なんでもなくない対話が、基本的でありながら哲学でもある対話が、煙に巻くようにころころと転がっていく。
普遍のテ-マを包含した物語だと思った。しかも、あまりにも普遍すぎて、普段からなにげなく見過ごしていたテ-マすぎて、改めてあめ玉に問われ、ううむ……唸ってしまった。
「きみは今どうして(中略)生きているのか分かっているのよね」
どう答えよう。
あめ玉の本分が全うされ、そして口の中に広がったソレがもしもあめ玉の“愛”ならば、人の本分を全うすることが愛だろうか……それとも、人であることが、すでに愛なのだろうか。ならば、
「どうして生きているのか」
どう知って、どう答えよう。
考え始めたら止まらない、脳内がカオスになりかねない難解な物語。しかし、軽妙な語り口が柔らかさをもらたして、まったく苦にならなかった。特に1pの「はじからはじを……」に始まる一連の流れには涙が出そうに。可愛らしくて、美しくて、軽快で……胸が踊る表現に感動してしまった。
香さんの感性、やっぱり好きです。