理香

海の描写
ラストの雨季へ向かう湿度を含む空気の描写。
整形手術を考える女性心理。
DVがあっても未だ情が絡む夫への気持ち。


たくさんの素晴らしい文学的表現の中でも、夜明けの海の描写がより印象に残りました。

18歳の順次が人妻の麗子を港で口説く際に使った、合コン明けの夜明けの海の描写です。


ぶどうの紫に例えた海面のいろ。
白と淡い桃色の空のいろ。


ひとの心とは様々な色に塗り替えられる、真っ白なキャンバスのようです。
麗子の心に順次の気持ちが染み通っていく過程が、説得力を持って伝わってきます。

順次から始まった麗子への気持ちが、麗子から夫、夫から麗子への気持ちの微妙な化学的変化が、ひとの心理として興味深く描かれています。


作者様の大人力によってこそ描写され得た、微妙で繊細な心の色の移り変わり、季節の移り変わりが切なくも美しい物語でした。