銭湯の帰り道、初夏の夜風が素肌を優しく撫でる。
汗と埃、心のわだかまりやしがらみをひと時洗い流して、この上なく身も心も心地良い。
幸せってなんだろう?その輪郭は掴めなくても、私は元気でやっている。その事実さえあれば、生きていくには充分なんじゃないかなぁ。
「ねぇ、ポカリ飲みたくならない?」
同じ歩調で隣を歩くルームメイトの茜が言った。
帰路のコンビニで彼女はお望みのスポーツ飲料を、私はカップのバニラアイスを買った。
私達が住むアパートの隣には小さな公園があって、その端に佇むぶらんこに私達は腰掛けた。
身体の重みで、鉄の鎖が高い音を立てる。何かの鳴き声みたいに響き、それは夜の闇に跡形もなく消えていく。
公園を囲む樹木の葉が青々と見事に繁っている。ほんの少し前には、淡い桜が凛と咲き乱れていたのにと、その姿を脳裏に思い返す。
季節は目まぐるしく移り変わるのだなぁ。