彼に責任はない。耳が聞こえないということは、ハードルにはなるけれど、それが一番の問題じゃないんだ。好き。何を根拠にするでもなく、好き。だから傷つけないで。
「洋、おはよう。宿題やってきた?」
私は彼の空いている隣の席に座って問いかけた。
少し姿勢をかがめて、口元と両手を動かす。
『おはよう、奈々。ちゃんとやってきたよ』
彼は口角を少しあげ、笑顔を作り、指先をキレイに動かしながら私に答えた。
私の目の前の彼、
洋は、耳が聞こえません。
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