苦しさの果てに ―夜―

作者achela

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何処かで聞いたことがある鼻唄


母がよく唄っていた鼻唄


掃除をしているとき、料理をしているとき、お風呂に入っているとき


私はこの鼻唄を聞くといつもどこか心地よい雰囲気になる

母に曲の名前を尋ねると、決まって同じこと言う


「知らなーい、だって私が作ったんだもん」

そう言って私の頭をくしゃくしゃに撫でながら笑う



そんな母を私は好きでした

それは父も同じで、父は母を愛していた


仕事から家に帰ってくる父に私は玄関に向かい、父の胸に飛び付く


父は私を優しく抱きしめてくれた


母は父の鞄を持ち食卓に付く


これが一般家庭で言う「愛のある家庭」と言うのだろう


私は幸せだった


考えるとあの頃の私は、あの幸せが無くなることはないと信じて疑わなかっただろう



だが、それは違った


真っ直ぐ進んでいた私の全てが狂ったのは、今から十二年前


私が六歳の時に起きた