これは身分制度が厳格に定められていた、平安中期のお話。
幼き頃、兄妹のように同じ時を刻み、育ってきた三人の幼なじみがいた。
だが彼、彼女らは互いに成長と共に、身分の違いから、それぞれ別々の道を歩きはじめる事となった。
太政大臣、一の姫であった千紗は、あるきっかけから帝の后となり、権力を武器に、国の中枢から不条理がまかり通っているこの国の脆弱な政を変える道を。
板東出身の武士であった小次郎は、故郷へ戻り、武力を武器に、現地に住まう弱き人々の生活に寄り添い、外側から政を変える道を、それぞれ約束する。
そして、過去には皇太孫という、もっとも高貴な身分であったはずの男、秋成は、己の過去も身分も捨てさり、何の力も持たない一人の男として生きていく道を選んだ。それは、過去に千紗と交わした約束を守り続ける為に――
身分や立場、そして住まう場所さえも大きく変わってしまった三人だったが、たとえ距離が離れようと、幼き頃、芽生えた互いの絆はこの先も変わりはしない。
何故なら彼等が目指す先は同じだから。
弱き者が力ある者に虐げられ苦しめられる不条理な世界からの変革。
国の為、汗水流し働く民人たちこそが、幸せに暮らせる国づくり。それこそが彼等の目指すべき事柄だから。
目指す先は同じなのだから、この先も三人の絆は変わらず続いていくものだと信じていた。
だが、なかなか思いどおりに進まない改革に、京と板東遠く離れた地域の間には少しずつすれ違いが起きていき、ついには決定的な対立を生む事に。
小次郎こと平小次郎将門は、板東の独立を目指し、中央政府に反旗を翻す。
世に言う「平将門の乱」が、ついに幕をあける――