愛人稼業をしている僕と君は、お互いの仕事を知った上で割り切って付き合っていた。
彼女は天真爛漫で、何にも執着しない透明のような性格で人を惹きつける。僕は逆に、相手にもらった言葉やプレゼント全てを手元に残し、相手の全てを受け止めるような性格を武器にしていた。
その勤務スタイルはそのまま僕らの恋愛にも反映されていた。彼女は僕からの贈り物をデートの際につけることもなく、自由に好きな服を纏う。そして僕はいつか彼女からの贈り物を入れるための空の箱だけを抱えていた。
いつまでも空っぽのままなその箱に、僕は君の名前をつけて、心の中でこっそりと呼んでいる。
これは、その箱に初めて贈り物を入れたときの物語。