大学院生の茉莉(まつり)は、決して明かすことのできない秘密を抱え、日々を過ごしていた。
それは、香水店を営んでいた父の失踪の真実。
ある日、同じ場所で店を開きたいと、一人の調香師・立葵(たつき)がやって来る。
――彼は、秘密を暴きに来たのかもしれない。
柔らかい物腰だがどこかミステリアスな彼を、茉莉は警戒する。
そして彼の真意を探るため、茉莉はアルバイトとして店で働くことに決める。
立葵が作るオーダーメイドの香水は、徐々に評判になっていく。彼はその鋭い洞察力で訪れた客が抱える悩みを紐解き、優しく癒す香水を作り上げる。
茉莉もまた立葵の香水に勇気づけられ、彼に好意を寄せるが、彼にもいくつかの秘密があった――。
商店街の奥に佇む香水店。時に温かく、切なく、そして恐ろしい、香りにまつわるミステリー。