ハロウィンの日、学生時代から嫌いだった厭な男、ビルから『失恋した』という電話がかかって来た。
彼は酒を煽り、時には涙を零しながら、その失恋話を延々と続ける。カボチャや魔女が犇めき合い、お菓子が山と積まれる部屋で。
ハロウィンの今日、ビルはその子と逢う約束をしていたのだ。それなのに、その子は来なかった。
きっとその子は、昨年の万聖節に、元の世界へ帰り損ねた妖精だったのだ。だから、今年、元の世界へと帰って行った。
来年のハロウィンには、きっとビルのところへお菓子をねだりにやって来る。
ビルの愛した妖精は、そう思えるほどの愛らしい子だった。
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