21☓☓年。自殺者の増加や延命治療の進歩を背景に、ある制度が導入された。それは「中途死」。心身が健康である成人が、臓器提供を条件に死を選択することを認めるものだ。
主人公は、たった一人の大切な友人とともに、中途死の権利を勝ち取った。二人は、ただ死だけが待っている、一方通行の特急に乗り込む。社会から疎外された自分たちも、互いだけは理解者であると信じて。価値もなく単調な生がその一瞬で満たされて、最高な終わりを迎えると信じて。
「私なんかが生きているより、生きたい誰かが生きた方がいい。こんな命、誰かにあげられたらいいのに。誰かのために死ねるなら、生きているよりずっと幸せなのに」
想像もできない遠い未来から、今も未来も同じく抱き続ける生への違和感を通じて、現代へと問いを投げかけるヒューマンドラマ。