いつか小説家になりたい、と新人賞に応募し続ける、自称ワナビー(何者かになりたい人)の久野綾真は本業の合間に親友で人気小説家であり引きこもり生活を送る大瀧旭の生活のサポートをしていた。
ある日、旭の弟である晶が綾真に相談を持ちかける。晶は旭とは違い、この世に何も自分は残せないのだと言う。綾真はそんな晶に対して小説を書くことを提案する。自分自身が今、目標としている新人賞に応募してみよう、と。
無事に新人賞に応募できた綾真と晶だったが晶の作品が最終選考に残ったことによってトラブルが起こる。旭の担当編集である磯貝閑音は大瀧旭の本名と晶の提出した本名が同一であるために、新人賞の規定違反により選考から漏れることを知らせてきた。
実は旭は多重人格であり晶は弟を名乗る交代人格だった。それを知る綾真と閑音は、旭とは別名義の晶としてデビューさせるべく奔走することとなる。
たとえ記録に残らない人物だって、そこに居たことを知る人がいれば生きた証になる。自分は何者なのか、それは自分自身で証明していくしかない。
これは周りに自分自身の承認を求めるSNS時代に、自分とは何かを証明する彼らの話。