乙女(おとめ)は、今村造船に入社して1年足らずの新入社員である。幼い頃から、自身で造った船で大海に航海に出ることを強く決心している。国立最難関のT大学で造船工学を専攻した。さらに国内では前例がないとされる、造船現場への配属を志望し、周囲を戸惑いとともに驚愕させる。しかし、今村造船の柳工場長に彼女の熱意が伝わり、柳の思惑と重なって国内初の女性工事担当技師への道を歩き始める。
造船工場の朝は早く、特に工事担当技師は常に工事の状況を把握しておく準備が必要である。工場には女性に配慮されたファシリティはなく、トイレすら1つだけである。夏でも重装備の姿で日3万歩以上歩く毎日である。
造船工場は、想像以上にヒエラルキーが強固な男性的な縦組織である。アフターファイブでは、飲む・打つ・買うの職場風土の中で、工員たちや同僚の”ゾーセン”な生活が待っている。常に男性的で刺激的な遊びで生きがいを見出そうとする価値観の中で、乙女は懸命に凌いで生きる。
建造船工事の順番に手違いが起こり、エンジン機材が船体に入らない事態が起こる。手戻り工事による納期遅れ、追加工事費は巨額な損失を招く。事態を知った関係者が青ざめる中、乙女のチョンボが功を奏し、この危機を救う。造船工場ならではのスリルとやりがいを感じる乙女である。
進水式は、工事関係者の報われる日でもあるが、華々しく晴れやかなセレモニーの中でも工事担当技師の緊張は解けない。進水式に訪れた多数の観客を巻き込んだ惨事に発展する危険を感じた乙女たちの機転により、無事に式は終わる。ここでも、多くの人の細心の注意が払われた上で船が造られていくことに気づく乙女である。
船主によって造船所に送り込まれたギリシャ人検査官とも対峙する。検査官は、船主のために手間を惜しまず、少しでも良い船に仕上げることが成果であるので、造船工場と利害が対立する。そのため検査官とは真剣な対決の場となるのだ。そんな敵から乙女は告白される。
現実は甘くなく、夢の実現までの道のりの遠さに落胆する日々である。しかし、乙女の情熱は次第に周囲の心を溶かし、工場に新しい風土が醸成されていく。乙女を孫のように可愛がる工員も現れてくる。過酷な仕事環境の中でも、持ち前の明るさと物怖じしない性格で様々な困難を克服しながら、夢に向かって成長する一人の女性の物語である。
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