現代の日本。女子高生・桧物誠は、十七歳の誕生日にじいちゃんに拝み倒され、遠縁だという神永家にしぶしぶ本を取りに行く。蔵には題名のない二冊の古い本があり、誠は直感的に小さい方の本を選び読み始める――
本の主人公・実は誠と同じ十七歳、王立書殿の新米上級書殿官…今でいうところの図書館司書。この国の王は「文字を依代にして物の怪を封じた占術師の子孫」と言い伝えられ、本は全て神物として扱われ、書殿官は神主的な身分でもある。
毎日真面目に働く実は、ある日赤子の泣き声を追って秘密の地下書庫に迷い込み、本に血を啜られる。言い伝えは真実だった…恐ろしい禁書たちから逃げまどう実は深層部に導かれ、そこに囚われていた青年と出会う。彼こそが、最凶の『現の物の怪』を封じた生ける禁書だった…!
国の真実を知った実は彼の元にこっそり通い、少しずつ心を通わせていき…いつしか彼のことを愛してしまう。彼の正体が幼い頃に事故死とされた王の親族・雨月であったこと、自分も禁書候補のひとりだったことを突き止めた実は、彼を人に戻すことを決意する。けれど封印を解く方法は国内ではわからず、実は両親に勘当されてまで国外に手掛かりを求めて旅立つ。そして八年の月日が流れた……
実は隣国で封印方法に辿り着いていた…それは『真名を・物の怪自身の血で・力持つ本に・王族が書き記す』こと。「力持つ本」は王の親族の力を結集して兄が作ってくれた、血は雨月自身から採れる、だが…現の物の怪の名は文字にできず、だからこそ雨月自身が禁書となっているのだ。しかし実は雨月との間に息子を産んでいた…封印者と封印される者両方の血を引き、類い希なる読み書きの才能を持ったこの子に賭けたのだ。
失敗は許されない、女王に与えられた一度だけのチャンス。父が語る不可思議な音を、息子・津月は父の血でページ一杯に書き記していき…八日目の朝、ついに本に封じ直した…!
兄は言う、「禁書は数多の人が開き・読み・閉じることで力を弱める。この方法で全ての禁書を開く」。女王も頷き、実たち親子にもその役を与えると告げる。三人は固く抱き合っていつまでも離れなかった…
実の手記を読み終えた誠は、大きい方の本に目を留める。自分は実の、ここ神永家は王家の末裔…つまり、この本は…
これは偶然なんかじゃない。私が今日ここに来たのは―――運命だったのか。
表紙写真:"Castle in the sky"©taka14(Licensed under CC BY 4.0)
時代・歴史
- #恋愛
- #禁断
- #切ない
- #純愛
- #和風
- #歴史
- #ファンタジー
- #コミックシナリオ大賞