主人公、終夜鴉紋が幼馴染の五百森梨理と異世界転移したのは、赤い瞳の人間を『ロチアート』と呼び、家畜の様に管理して喰らう世界であった。
秩序も規律も守られ、犯罪も起きぬ泰平の世界。その住人に何の悪意もなく大切な人を喰わされた鴉紋は、腕を黒く変化させ、人ならざる剛力の力を発現する。
怒り迸り何もかもを破壊しながら、鴉紋はその世界を統治するという9人の天使の子を殺し尽くし、自らの願う世界を創造する為に闘う事を決意する。
始めは一人であった鴉紋だが、その道すがら志を共にする仲間に出会う事になる。
幼馴染に似たロチアートの少女セイル。
ロチアート農園の教育者死人使いのフロンス。
貧民街の快楽殺人鬼、夢使いのシクス。
いずれも特殊な性癖を持つロチアートである彼等に、自らも人間であることを悟らせた鴉紋は、彼等と共闘し都の憲兵隊、そして天使の子と激闘を繰り広げ、世界そのものに反旗を翻す。
しかし、彼がこの世界に訪れてしまった事も、その世界を破壊するといった、ある種異常に思える意志すらも、彼の内に潜む別の人格による因果のものである事を彼は知らない。
そして壊れていく。ロチアートも同じ人間だと言いながら、ロチアートの為に人間を殺戮していく悪魔へと。平和な世界に堕ちて来た、ただ一つの悪意として。
そしてもう一人の主人公、騎士ダルフ・ロードシャイン。
両親を鴉紋に殺された事で復讐の鬼となり、幾度となく戦いを挑んでは敗北を喫する。しかし彼の内に滾る執念が、異形の力を呼び起こしていく。
宿敵と何度も剣を交えるうちに、ダルフは否定していた筈の鴉紋の言葉に、ある疑念を抱き始める様になっていた。
――ロチアートとは何なのか、正義とは何なのか。
自分の信じた正義の在り方に疑問を抱いたダルフは、瞳の無い少女、リオンと共に宿敵を追う旅路に出た。
ダルフは奇しくも鴉紋と似た経験を経ていく事となるが、導き出される結論は決して交わらない。
辛く険しい旅路を繰り返し、ダルフは一つの結論に至った。
そうして彼は民草の為だけに、鈍色の巨大なクレイモアを振るうのだ。
悪魔を滅し、安寧を取り戻す為に。
この作品は「悪逆の翼〜絶望の世に堕ちた魔王は、家畜の為に人類に復讐する〜」をシナリオ化したものです。
https://maho.jp/my/works/15591074771453259465