「あなたはぼくと同じドラゴンだった」
内戦で妻子を失い、合衆国に亡命して、タクシーの運転手として生計を立てている琥珀に、ヴィルフリードは囁く。
「ぼくたちは別の世界で無双のドラゴンだった」
タクシー運転手の傍ら、男相手に身を売る副業とも呼べないこともしている琥珀は、流されるままヴィルフリードと一夜をともにする。
ヴィルフリードは久しぶりに逢えた恋人に対するようにふるまい、人違いだと思いながら、一夜限りではない付き合いに琥珀は密かに喜ぶ。やがてヴィルフリードと行動するうちに、自分が飛ぶことが好きだったことを断片的に思い出す。
だがその記憶は悲しみと喪失へとつながっていた――