ふたつの月が昼を照らす世界。神託を予知夢で見る巫女姫の秋令を、兄で若長の月黄泉は大切に守り育ててきた。ある夜、秋令は夜の闇玉が明るく輝き昼夜が逆転する予知夢を見た。夢には侵略者らしき者の姿も。その後、闇玉はしだいに光を増し、周辺部族も未知の者たちに次々と侵略されてゆく。これも神託のとおりならば逆らう術はない。武力では敵わない月黄泉の一族は、侵略者の長と秋令の婚姻で戦わずして彼らの支配を受け入れようとする。血の繋がらない兄をひそかに恋い慕っていた秋令も、それを受け入れる覚悟をした。だが、神官でもある叔父は野心から自分の娘こそが新しい支配者の花嫁に相応しいと主張し、月黄泉と秋令を陥れる。それは神託に逆らう選択だった。闇玉は太陽となり大地を焼いて枯渇させ、多くの民が死んでゆく。月黄泉と秋令はその身を神泉に沈めて雨を乞い、一族を救おうとする。その神泉の底で、秋令は神託がほんとうは何を意味していたか理解するのだった。