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白澤木兎

しらさわ ぼくと

別作品執筆中のため銀狐更新停止中です。

妖怪とか陰陽師とか道教が好きです。
魔法少女より仙人派。


読書記録 3

読書記録です。

今回読んだのは↓

「天涯の楽土」篠原悠希・著 角川文庫

前回記録を書いた「霊獣記」の著者さんのデビュー作です。
いや……よかった……
前読んだ二作とは違って、この巻だけで完結出来る話でもあるので、そう思ったのかもしれませんが。
という事で、行ってみます。

【概要】

舞台は弥生時代後期の日本、久慈島と呼ばれていた九州です。
北部のとある里に住んでいた少年・隼人は他の邦の襲撃に遭って奴隷になってしまいます。
そこで、剣奴(戦うための奴隷)のめちゃくちゃ強い少年・鷹士と出会います。
自分の里を襲った鷹士達に、隼人は反抗的な態度を取りますが、次第に関係を気づいて行きます。
そんな中、久慈島内で起こる大きな戦いに巻き込まれて行き……

という感じの、ジャンルでいえば歴史ブロマンスものって感じです。
古代日本を舞台にした小説で有名なのは勾玉シリーズですが、それとはまた別の雰囲気ですね……

では、感想。

【感想】

今回はそんな微妙やなと思ったところが無かったので、普通に良かったなあと思った事を書きます。

まず世界観ですが、記紀をベースにいろいろと考察されていて、なおかつしっかりファンタジー要素も入ってました。
神を信仰し、神の元に生きる人々。そこから、「王」という存在が現れるまでの、その変遷の。
渡来人の扱われ方、久慈島という島の中に生きる様々な民族や人種、そして階層社会。
あらゆる事を、あまり説明を入れずに、当時の生活や人々の思想はこうだったのかなと自然に想像させるような物語でした。
そして恐らくこの作品のテーマは「他者へのレッテル」だとか、「自分の生き方」みたいなものなのかなあと思いましたが、世界観とテーマの絡ませ方がとても良かったです。

次に、キャラクターとストーリーですが、これが本当に良かった……
主人公の隼人は、元孤児で奴隷になって……という感じですが、実は……という感じで、更にそれも実は……で一転二転します。いろいろと自分の知らなかった・信じられなかった事が明らかにされていく中、それでも前に進まなければならない姿にすこしうるっと来ました。(そしてこの子を見て、「ああ、主人公もっといじめよう」と改めて思いました)
もう一人の主人公鷹士も、無言で非情でめちゃくちゃ強いけど、その過去は……という感じで、主人公に負けず劣らず可哀想……。隼人と共通する部分の境遇もあって、余計に感動してしまった。(やっぱり似た境遇設定はよいものだ、と再認)
そんな二人が、島の運命を左右するような出来事に巻き込まれて、関係を深めていくなんて最高にドラマチックでした。
他のサブキャラたちにも、それぞれ抱えているものや自分の信念があって、すごくキャラが立っていていいなあと思ったところです。

あと、個人的に好きな考え方……みたいなものが、「神はただ見守るだけ、人の歩む道は人が作る」というやつで、それが入っていたので余計にいいなあと思ってしまったのです。
天命記で神が思いっきり介入してくる話書いといて何言ってるんや、という感じですが……
自分の生き方は自分にしか決められないんですよね……と個人的には思っている所です。
(この辺りの話は私のこれまでの人生みたいなものの話に関わってくるので、また追々……)


という訳で、今回は10点中10点!と思いました。多分、好みにドはまりしてるからもある。
やっぱり、いろんな背景がある人達が、それを抱えながら前に進んでいこうとする話はよいですね。

ちなみにこの本は続編で「蒼天の王土」という本が出てます。
今単行本しかないですが、そのうち文庫にもならんかな~と思いつつ、積み本を消化しながら待ってみることにします。

ではではこの辺で。

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