24歳のOL・優乃《ゆうの》は好きなアプリゲームが半年後にサービス終了すると知り、絶望する。
『獣人育成計画 ~もふもふの庭~』、略して『もふ庭』。
簡単に言えば、庭に玩具《おもちゃ》や餌を置いておく放置寄りの育成ゲームで、餌をやり忘れても餓死にならないところが最高だった。
ただ毛玉を拾ってきて、なでなでして、ごはんをあげて、獣人化したら洋服(課金すると豪華な服が買える)を着せかえて遊ぶシンプルなゲームだ。最初の頃は本物の子猫や子犬や子兎だったりして、非常に可愛らしく、熱心に育てれば一ヶ月~半年くらいで人型にもなれる成体の獣人モードに入る。
優乃の『庭』にも成体が一匹いた。
名前はレイ。幼いときは雪のようにふわふわの毛玉だったが、今はさらさらの白髪と金色の瞳。二十歳くらいの狼種の獣人で、勘違いでクールタイプの餌をやりすぎたせいか、ワイルドタイプにしては笑わずに敬語口調。
(いまや我が家のボスに指定できるくらい立派に育って、なんだかんだアットホームな庭を築けていたのに……)
まだ毛玉(赤ちゃん)状態ですやすや眠っている子や、走り回っているちびっ子、優乃が追加したごはんを食べて幸せそうにしている子もいる。
のどかな『庭』をぼんやりと眺めながらうたたねをした優乃は、次に目覚めたとき部屋に白い狼がいることに気づく。謎の狼によってゲームの『庭』に引き込まれた優乃は、獣人のレイ達とここで生きていこうと決めるのだが、『庭』の世界で夜中の0時になると現実世界に戻ってきてしまう。現実では時間が経っておらず、夢だったと諦める優乃だが、それ以降も夜になると部屋に狼が現れて、毎晩『庭』へと通うことになる。
ゲームシステムである『店《ショップ》』で買い物をする時以外は、物々交換が必要だと気づいた優乃は、もともとの趣味であった洋裁技能を生かして服を作って暮らそうとする。
毎晩、長い夢を見るように異世界での交流を楽しむ優乃だったが、このゲームは半年後にはサービス終了が決まっている。
その前にこの世界に移住したい優乃は方法を模索し、レアアイテム『つがいの指輪』を手に入れてみようと考える。
一方、狼の獣人レイは、本当に帰れなくなってもいいのかと案じつつも、彼女と離れたくない気持ちを抑えきれず、彼女の定住計画を手伝うのだった。
キャラクター・プロット
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