小澤晶子は、とある湖にいた。16歳という若さで、人生を閉じようとしていた。
学校でのいじめから不登校に、そして両親にもなんとなく後ろめたい、そんな日々の心の拠り所は大好きな漫画だけ。しかし、その漫画も突然休載してしまい、晶子は自分にはもう何も残っていないと感じてしまう。
湖に一歩ずつ踏み入る足、底を失って沈む体、これで辛かった日常を手放せる、そう思ったのも束の間、大きな渦に飲み込まれてしまった。
辛い現実から逃げ出したはずが、目を覚ますとそこは煌びやかな貴族の世界であった。
脳になだれこんでくる記憶から、漫画の世界に転生してしまったことに気づく晶子。しかし、その新たなる人生は漫画の主人公アミリア...ではなく、アミリアをいじめるフォンティーヌ公爵家の第一息女、エリーザであった。そう、晶子は一転、悪役令嬢となってしまったのである。
ちょうどその世界では、パール・ド・クレア=皇太子の婚約者候補を選定するための顔合わせを兼ねた舞踏会、を控えていた。
悪役令嬢に転生してしまった晶子は、貴族の世界で優雅に暮らせる...はずもなく、主人公にやりこめられてしまう結末に絶望する。読んでいた漫画の世界、これからの自分の運命は最早ネタバレ済みなのだ。
しかし、晶子は気づいた。ネタバレしてるのなら、自分で運命を変えてみては?
ストーリーを知っているからこそ、これを逆手にいじめを全て回避してみせようと意気込む晶子だか、そこで待っていたのは、漫画に描かれていないエリーザのアナザーストーリーで...?
思いもしない出会いと結末が、晶子を待っている。