亡くなった人間が本になり、その本が集められる物読みの塔で目覚めたリシア。本は物読みに読まれることで、次の命へと還る昇華が起こる。塔に来る前の記憶が一切ないリシアは、物読みの長であるエマの元で物読みとしての仕事を始める。
リシアは他の物読みと一緒に楽しく仕事を続けていたが、塔の中の中庭で休憩している時、仲の良かった物読みのサーシャが喋れなくなる場面に遭遇する。何かの異変が起こっているとリシアは不安になり、密かに想いを寄せていたアベルとサーシャのことで協力する。
翌日、エマに突然呼ばれて向かった先はサーシャの部屋で、サーシャは本と同じように白い光に包まれて昇華して消えてしまう。エマは物読みは本の魂の昇華を助けながらも、自分も昇華をするのが目的だとその場に居た物読みに伝え、リシアは動揺する。
リシアはひたすらに本を読むが、昇華がどういうものなのかさっぱり分からず、周りの物読みが次々といなくなっていく。また、新しい物読みも次々と入って来る。さらに毎晩見る夢にうなされ、物読みの仕事が手につかなくなっていった。焦りと辛さから物読みの仕事に行けなくなったリシアだったが、アベルに一緒に昇華しようと誘われて、何とか物読みを再開する。また、自分に話かけてきた賢い物読みであるカインとサーシャについて話すことで、物読みと塔、そしてエマが何かを隠していることに気付く。
中庭でカインと疑問について話していたリシアの元に、アベルがやってくる。アベルは喋れなくなっており、その症状はサーシャと同じだった。さらにエマがやってきてリシアの目の前でアベルは白い光に包まれて昇華してしまう。リシアとカインはエマに物読みについて問答を行い、その過程でカインも昇華していなくなる。
目の前で自分の知っている二人が昇華したこと、さらに物読みには期限があり、その期限までに昇華できなければ消えてしまうことを、リシアはエマから告げられる。
リシアはショックから自室に引きこもるが、自分の存在がどんどん感じられなくなっていく。そんな中、昇華した三人が自分に約束をしたことを思い出し、その約束が一緒に昇華することだと信じてリシアは物読みの仕事を再開する。
リシアは本を読むたびに自分がかつてどんな人生を送ったのか、ということを次第に思い返していく。本は人間の人生が凝縮されており、最後は必ず死んで終わる。普通の人間は本になり、物読みに読まれるだけで昇華されるのに自分たちは違う。リシアはその違いについて物読みを続けながら考えを深めていく。どうして自分たちはエマの元、物読みをしなければならないのか。
そして、まったくの別人でありながらも、本を読んだ瞬間にアベルだと分かる本に出会う。アベルは言ってしまえば平凡な人生をしっかり終えて、家族に看取られて亡くなる。リシアはその本を読んで涙を流し、自分はこのように死んだのではないことを悟る。
期限が刻々と迫る中で、リシアは物読みは自死したものたちで本にはなれない存在だと気付く。その事実を悟り、喋れなくなったリシアの元にエマが現れ、物読みは自死した者たちが、自分たちの贖罪をするための作業だと真実を聞かされる。多くなり過ぎた本をエマ一人では昇華できなくなり、本を読む作業を自死したものにさせるようになった。物読みに読まれた本の内容はエマに瞬時に伝わり、それをもとにエマが昇華を行っていたのだった。
アベルのように白い光に包まれたリシアに、エマは優しく微笑む。次は本になれるように、そう言い残して。
ある物読みが本を開く。そこには、厳しい生活を懸命に生き抜き、病気を患いながらも決してあきらめずに生き抜いた女性が書かれていた。亡くなる時に、本になれるかなとつぶやいて彼女は息を引き取った。