妻がゾンビになった。ゾンビになるというのは別に珍しくはない。誰にでも起きる得ることだし、ゾンビになっても会社で働き続けることはできる。ゾンビイコール死という社会ではなくなった世界。でも、主人公である「僕」にも妻にとってもどこか他人事だった。そんな妻がある日、ゾンビになったという。病院に行き治療をしても症状は良くなるところか悪化するばかり。ゾンビ化をきっかけに妻は仕事をやめた。差別はないなんて建前だけで実際にゾンビになると仕事を続けるのが難しいのが実際に当事者になったときの事実だった。病気が進行する中で少しだけ妻と夫婦らしい幸せな時間を過ごす。一緒に暮らし食事をとる。そんな当たり前の夫婦としての生活が妻の病気によって実現したのだ。妻の作る温かい食事に一緒に笑う何気ない日常。当たり前でささやかな幸せがある普通の夫婦なら暮らしを噛みしめる主人公と妻。しかし、その生活も長くは続かなかった。妻の病気が進行するに連れて妻は人間ではない存在。ゾンビらしくなっていく。まともに言葉も喋れずに人間としての自我を失っていく。食べるものも人間の食べ物からゾンビの食べ物に。その変化を認めたくない主人公。しかし妻の病状は確実に悪化していき、最後には檻で飼育することとなる。妻はときどき人間らしさを取り戻し「殺して」と哀願する。それでもなかなか決意できずにゾンビである妻を殺すことも人間として扱うこともできずに同じ屋根の下で妻が死ぬまで生きた。